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点滅

by 中村菜月

「大人」と「子ども」の境界はどこにあるんだろう ということをすごくよく考える。今のところは「点滅」、というのが今日のおはなし。

小さい頃から「大人」と接してきて、自分もいつかはこういう人たちになっていくのかなと思ったときから、その変化はいつ訪れるんだろうと考えていた。

大人は私に何かを語りかけてくるし、言うことをきかない友達をしかるし、レジでピッてする。宿題をやりなさいという。あなたの将来が心配だという。あなたのこれからが楽しみだという。
子どもと接するときの大人は、どこか仕上がっている。

概念としての「大人」はしっかりとしていて、何かしらの責任を持っていて、ひとを守ることができる。自分の答えを持っている。それを子どもに与えているし、ネガティブな感情をもっていえば、押し付けてくる。

そしてちょっと噛み合わない。見ている景色が違う気がするから

小さい頃に、「子どもは純粋だ」とか「この発想は子どもじゃないとできないよね」とか、もう自分は大人なんだと分かっている人たちからそういう言葉をきいて、自分は子どもなんだと理解をした。
子どもである自分が持っている、どうやら大人になると失われるらしいものを、毎日毎日なくさないようにと考え、今日まで守ってきてしまっている。幼いころの記憶や感情を、強く引き継いでいる。

だから、もしかすると自分は大人になれないんじゃないか、と少し考えてしまった。

同級生は、いい意味でずいぶんと大人になったなと思う。職場の悩みをきいたり、結婚の報告をもらったり、華金を楽しみにしていたり。
見た目も大人びて、私がショッピングモールの真ん中で似顔絵師をやっていたころによく描いた、若い大人のひとたちと話していた時と同じ感覚になった。

どうやったら自然に、大人になっていけるんだろう。みんなが、今いるすべての大人が「自分は大人だ」と認識したのはなぜなんだろう。

こういうときに自分はひとりぼっちなんじゃないかと思う。

最近、自分はそれでも少し大人になったきがするなと思った。
夕方、気が済むまで歩こうと思って家の近所をひたすらぐるぐると歩いていたときのこと。習い事の教室から帰る道を歩いていたら、ふいに当時の自分の感情とすれ違った。

じわっと薄暗くて、木がもさもさと生えている細い道。

小学生だったわたしは毎日、些細な心配事でいっぱいだった。
横書きにしなさいと言われた名前磁石を縦書きにしてしまった。鉄棒の前周りが怖い。ドッヂボールが嫌い。時間内に給食が食べられない。図鑑で見た大きな蛾がわたしに飛び込んで来たらどうしようと、家のドアが開けられない。

大丈夫だよ。大丈夫だったよ。
なんとなくそんな感情がわきあがって、心の中でつぶやいた。
じぶんはあのころよりも随分と見える景色が広がったんだなあと思って、これってちょっと大人になったってことかなって。

けれども自分のなかの子ども性は消滅していないと思った。当時の感情を引き継いだまま景色をみているから。


子どもの感情を強く引き継いだまま、当時の不安を大丈夫だよと落ち着かせてくれる大人としての自分がいる。
大人としての自分をそんな風につよくさせたのはあのときにめそめそしていた自分だ。

そして最近は、自分が歩き出しているような感覚もある。

おそらく、子どもとしての自分が完全に消滅する人はいない。
詳しいことは忘れてしまったけど、少し前の時代まで、子どもは小さくて使えない大人と捉えられていて、子どもという概念が無かったそうだ。その大人たちは自分が子どもだった頃を思い出すことは無かったのだろうかと疑問に思うけど。

誰にでも子どもとしての自分がいて、それを強く引き継いでいるかそうでないか、という個人差の違いのような気がする。
それぞれにある「大人の概念」を成長過程で学び、真似ていくことで自分の中の大人を確立させていくのかもしれない。

そう考えてしまっている以上、自分がそれを自然に行うことは困難のような気もする。

自分はひとって演者だなと思うことがよくある。これについて今日は書かないけど、人によっては大人性を強く演じていて、子ども性に蓋をしているようなひともいる。
でもやっぱりふとした時に子ども性は現れて、もう一生思い出すこともなかったかもしれないある夜の夢を思い出したときのような感覚になるんじゃないかな。

最初に書いた「点滅」というのは、大人と子どもという境界線はたぶんなくて、それぞれのもつ大人性と子ども性が点いたり消えたりしていて、その程度は人によって異なるんじゃないかなということ。
光り方も、光る長さもそれぞれだと思う。

自分はこれからも子ども性を強く引き継いでいくと思う。それは大人になりたくないという感情ではなくて、なんとなく、そうする必要がある気がしているから。

長くなってしまった。読んでくれてありがとうね!

おしまい






中村菜月
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