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生きていてよかったとおもう

by 中村菜月

何もない朝、窓際の日向にうずくまっていた。ここ数日咳がとまらなくて、そのせいか身体中が痛い。けれどもこうやってひなたぼっこをしていると、身体は次第にみしみしと音をたてて、それから少しずつ解れていく。いろいろなことが治るような気がした。

肌寒くなると、わたしはいつも、濃くて温かい麦茶をいれる。わたしは珈琲がだいすきで、ほんとうは豆を挽いて、湯を沸かして、部屋中を珈琲の湯気で満たして、ふつふつと膨らむ珈琲を眺めながら時間を感じたい。けれども身体がカフェインに非常に弱く、飲むことができない。だから濃くて温かい麦茶を沸かす。

目にかかっていた前髪をやっと切った。ほんとうは美容室へいきたい。6月頃から行きたいとずっと思っているけれど、電話予約が苦手で、季節をふたつほどまたいだ。

土鍋でごはんを炊くようになって、もうじき2年が経つ。土鍋への憧れと、アンペア数が低いという部屋の事情で土鍋生活を始めた。ぐつぐつと炊ける、鍋蓋を揺らすがたがたという音がつややかだとおもう。

味噌汁の欠かせない季節になったとおもう。ふうふうとのんで、身体中に染み込んでいく。あーーー  て言う。この、あーーー が大事だとおもう。

朝の薄暗い部屋のなかで、濃くて温かい麦茶と、ごはんと、味噌汁の湯気がもうもうと膨らむ。窓際の瓶やグラス、積み重なった絵皿が、どこからともなく光を受け取って静かに光っている。なんて美しい景色なんだろうとおもう。

無造作に積んだ本は重力の美しさを知っている

影の青さがすばらしい季節になった。この色をみたときのこころの安らぎをいつまでも忘れないでいたいと思う。この感情をいつでも取り出して、わたしは尊く眺めている。

コントラスト

光にいつまでも感動している。

湿ったアスファルトが金色の朝

排気ガスにみとれる。

こういうことで溢れている、生きていてよかったとおもう。

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